色んなものが混ざり合っていて、オリエンタル感と言うんですかね
––––そもそも今作の制作前~制作中、みなさんが興味を感じていたことって、どういうものだったんでしょうか。
大胡田なつき(以下、大胡田) 私の場合は「世界から見た日本」という雰囲気に惹かれてました。これは世界を視野に入れてどうこう……という話ではなくて、世界から見た日本って、日本なんだけど日本じゃない独特の感じがあると思うんです。色んなものが混ざり合っていて、オリエンタル感と言うんですかね。
––––和の国でありながらテクノロジー先進国でもあったり、アニメ・カルチャーの国でもあったりという、今の日本ならではの洋邦混ざった不思議なイメージですね。
成田 僕もちょっと似ているんですけど、日本独特のもの、「和」と言われるものってどういうものなのかな? ということに興味があって。たとえば、日本には「和メロ」ってあるじゃないですか。そういうものって各国、その土地ごとに好まれているメロディーがあると思うんですけど、そういう「民族音楽の民族性」みたいなものに興味があったんです。たとえば、四つ打ちでフェスに即した音楽というのも、今の日本っぽさのひとつなのかもしれないし。だから入口は違うんですけど、結果的には同じ方向を向いていたのかもしれないですね。
僕は常に曲を書いているので、去年の7月のはじめぐらいだったと思いますけど、アルバムが終わって次の週には新しい曲を書き始めました。最初にメンバーに聴かせたのが、“とおりゃんせ”や“アジアン”ですね。僕が惹かれていたオリエンタルな感じや民族性というのは、この辺りの曲にも出てるんじゃないかと思います。
大胡田 パスピエの場合は曲が最初にあって、そこから受けたイメージで歌詞をつけていくんですけど、結局歌詞もオリエンタル感を意識したものになっていますよね。あとは、私は曲を作ってる時って、聴き手の人たちとの想像力の戦いだと思っているので、余白を残すというか、聴き手に委ねる部分を作るのは今回も意識していたことです。
パスピエ – “とおりゃんせ”
––––たとえば“トーキョーシティ・アンダーグラウンド”はニュー・オーダーを意識したそうですが、他にも具体的にこのアーティストに影響を受けた、というものはありますか?
成田 今回は曲ごとにサウンド・イメージを持ってレコーディングをしたんで、他にも色々あったと思いますよ。たとえばスクリッティ・ポリッティをイメージして、「こんな感じにしたい」ってエンジニアの方に聴いてもらったりとか。あと、“わすれもの”だとラナ・デル・レイのアルバムを聴いて、音の質感がいいなと思ったり。他にも、“世紀末ガール”にはギターとキーボードのソロのかけ合いがありますけど、この曲に関してはたまたまセッションしていた時にディープ・パープルみたいなギターが出てきて、「それ面白いね」って話になったんです。僕らはスタジオでセッションしている時にフレーズを思いついて曲が変化したりすることが多いんですよ。新鮮なアイディアを大事にしたいし、そういう制作過程に面白さを感じるので。アレンジでいうと“七色の少年”とかは、オーガニックな質感を大事にしたいと思って、オクターバー(元音のオクターブ上下の音を発生させるエフェクター)を使わずに一本ずつギターを重ねたりもしました。
パスピエ – “トーキョーシティ・アンダーグラウンド”
New Order – “Blue Monday”